矢崎真名さんからのいただきものです。

菜の花畑にて

「へ!?菜の花って食べれるの?!」
「ええ、花をつけるつぼみの時だけね。そういえばあなたには作ってなかったっけ?」
「ない・・・と思う。学校で菜の花が油?とってたとかは先生が言ってた気がするんだけど。」
「そう?実はもう一つの用途があったのよ?あんまり知られてはいないみたいだけど。」
「え、何々?」
「自分で調べなさい。」
「ちぇっ、おかーさんのけちー。」
「はいはい。行くわよ。」
春と呼ぶにはまだ少し早くて、けど菜の花が満開に咲いてたどこか。そんな会話をした気がする。結局、あの時の問題が分かんなくて、渋々答えを教えてもらったっけ。
あと後日談もあったな。

「アレまずい〜嫌い〜。」
「う〜ん、菜の花のからし和え、やっぱりダメだったわね。ま、その内良さも分かるときが来るわよ。」
「絶対ない!」
「あら、分からないわよ?好き嫌いも変化していくものだから。」
「そーいうもん?」
「そんなもの。にしても、本当に好きねぇ。」
「うるさいよ。母さんが好きなんだろ。」
「あらばれちゃった。母さんね、この花の色と空の色が一緒にあるのが大好きなのよ。だって、すてきじゃない?」
「・・・うん。」
「やっぱりお母さんの子ね〜。今日の晩ご飯、何食べたい?」
「なんでもいい。」
「それが一番困るんだけど。」
「良いじゃん別に。」
そんな会話もしてた。

 悲しいときも、苦しいときも。いつもここに足を運んで、ただぼんやりしてた。そうすると、色んなモヤモヤが晴れる気がして。うれしいときも、ここに来るとそんな思いが倍増した気もして、はしゃいでた。ずっとずっと、花が終わった時期でもいってた。

大好きな、大切な場所。




「やっぱりここにいた。」
「ああ、ついな。」
「本当、大好きだよね〜。ちょっと家に持って帰っても大丈夫かな?」
「う〜ん・・・どこの誰の土地とかもしんないからな〜ちょっとだけならいいんじゃない?」
「本当に、毎年いつ見ても、きれいに咲くね。」
「うん・・・。」
「この子も、ここに連れて行こうね。」
「そうだね。じゃ、いこっか。」
「うん。」
遠い日と同じように、二人手をつないで歩く。

いつまであるか分からない、けれど大好きなこの場所を
ずっと伝えていくのだろう。

この、菜の花畑を

おわり

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