「冒険！」
　自分の体で風を受けて、
「冒険！」
　自分の足で歩いていく。
「冒険だあっ！！」
　さあ、これから冒険の始まり――
「うるさいっ！」
　ガンッ！
　どこからともなく飛んできた発光体が頭に見事直撃。
「いったーい！　なにすんのよ！」
「うるさいって言ったの、聞こえなかった？」
　目の前には小さな発光体。
「だからって何も頭に直撃しなくても……」
　ひりひりする頭を押さえる。うー、まだ痛い。

　今頭をおさえてうずくまっている女の子はリズ。
　藍色の髪に綺麗な紫の瞳。メガネがチャームポイントの可愛い女の子――
「……って、どこに向かって話してんの、あんた」
「いやちょっと自己紹介を……」
「……誰に？」
「……さぁ……」
「朝っぱらからそんなわけのわからん自己紹介すなっ！」
　ガンンッ！！
　さっきの倍以上の音がなりひびく。
「まったく。『冒険』『冒険』って。あんた二こと目にはすぐそれよね。学習能力ないの？」
　今わたしに体当たりをしてのけ、なおかつ文句を言っている小さな発光体は、マリーナ。わたしのお目付け役。
「だって今日はお兄ちゃんが帰ってくるんだよ？嬉しくないわけないじゃない」
「はいはい。あともう一人の人にも会えるからでしょ？」
「もっちろん！」
　そう言って胸をはる。
「……冒険って、ほんとにいいよね」
　自分の体で風を受けて、自分の足で歩いていける。
　今まで知らなかった、いろんなことを見たり聞いたりして、これからもずっと前に進んでいくんだ！
「さあ冒険だーー！！」
　意気込みも新たに、わたし達は道を駆け出した。