拍手その10

あの人への手紙 その1

元気ですか? オレは元気でやってます。
元気ですか? おれはまだ夢の中です。
元気ですか? ――はまだ目覚めてもいない。

どうしようもない哀しみと。
どうしようもない後悔と。
ほんの少しの希望を胸にオレは生きています。

だけどこれは、オレが決めたことだから。
たくさん迷うかもしれないけど、がんばって生きていこうと思います。

元気ですか? オレは――


あの人への手紙 その2

本当にバカなのよ。あっちもこっちも。本当、男ってバカみたい。
だけど、ほっとけないの。
自分でもわかってる。どうしようもないってことくらい。
本気で頼りないくせにどうしてあんな無茶するのよ。どうしてへらへら笑ってられるのよ。
多分、アタシの勘は当たってると思う。あなたはきっと――

ううん、なんでもない。
だから、この手紙はあなたには見せません。


あの人への手紙 その3

元気でいますか? そんなことを書いても貴女は返事などしてくれないのでしょうね。
あの子も相変わらずです。もしかすると前よりもひどくなっているかもしれません。

あれからどれだけ月日が流れたのでしょう。
私は変わりましたか?
俺は変わったのか?

聞いたところで答えはどこにもありません。

だから、約束を守ることにしたんです。
だから、利用することにした。自分のために。

今の姿を見たら貴女は何と言うのでしょうね。
それではその日を楽しみに、のらりくらりといくとしましょう。


あの人への手紙 その4

遅い。
遅いにもほどがある。
あたしは短気なんだ。人を待たせるのもいい加減にしろ!

……嘘だよ。本当はわかってる。それがどれだけ難しいかということくらい。

それでもあんたは来てくれるんだろ? あんたはそういう奴だから。
ふてぶてしくて、でも、孤独にずっと耐えてる人。

だからあたしは、あんた達にかけてみようって思ったんだ。
あたしは、あんた達を――あんたを待っている。


あの人への手紙 その5

本当に君達って馬鹿だよね。
だけど、オレはその馬鹿さ加減がうらやましい。
不器用にもほどがあるだろ。特にそこの約一名。もう少し内面と外面を埋める努力をしな。見てるこっちが痛々しい。

オレも馬鹿に毒されてきたのかな。今じゃ観察日記をつけるのが面白くて仕方がない。これもひとえに君達のおかげだ。
だからこそ君達にはがんばってもらいたい。
オレには何の力も残ってないけど見守ることはできるから。

それじゃあまた、どこかで会えることを願って。
それじゃあまた、みんなが笑える日々を願って。